民族
民族とは 【race; nation】
民族の定義・意味など
民族(みんぞく)とは、身体的特徴による分類である人種に対して、言語・宗教・慣習などの文化的特徴によって分類した人類の集団をいう。
参考:『最新 地理小辞典』 二宮書店、1983年、377頁など。
注意事項
形質人類学的にも、言語的にも、純粋な単一民族が存在したためしはない。
日本は比較的純粋な民族から成立しているため、我々はほかの民族についても同様に考えがちであるが、それをもって他を律することはできない。
護雅夫・岡田英弘編 『民族の世界史4 中央ユーラシアの世界』 山川出版社、1990年、まえがき。
民族の本質
言語と宗教
生活様式や帰属意識なども人類の集団を作る共通項となるが、民族の基本になるのは言語と宗教である、とされる。
『新編 詳解地理B 改訂版』 二宮書店、2019年、170頁。
しかし、現実には、言語は遺伝するものではなく、人間でさえあればどんな言語でも話すことができる。
岡田 英弘 『世界史の誕生』 ちくま文庫、1999年、239項。
また、宗教も同様である。
したがって、民族という観念はそもそも実体のないフィクションに過ぎず、同じ言語を話す民族は同じ先祖の血統に属する同胞であるとする民族主義のイデオロギーは過去の事実を無視した感情である。
岡田 英弘 『世界史の誕生』 ちくま文庫、1999年、239項。
近代ヨーロッパで発達した1つの国民が1つの国家を作るという国民国家(後述)の考え方からは、国民国家を作りたいがまだ作れない人々の集団が現れる。
それを日本語で「民族」と呼称する。この言葉は20世紀初めの日露戦争の後で生まれた日本人の造語で、ヨーロッパ語にはそれに相当する言葉がない。
「民族」は、日本国民はすべて血統を同じくする大和民族であるという日本でだけ通用する特殊な観念から生まれた言葉である。
そのため、国土(領土)を獲得し国民と認められて国家を作ろうという国民主義の主張は、日本では民族主義と訳されることになる。
岡田 英弘 『世界史の誕生』 ちくま文庫、1999年、239項。
民族と関係する概念
反対概念・対概念
人種
ヨーロッパ人種など
類似概念
語族
なお、語族は民族を指すのではなく、言語を系統学的に分類する概念であるが、民族を分類する場合にも言語の分類(語族)が基準にされることが多い。
語族 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/語族
民族から派生する概念
国民国家(民族国家)
現代世界では国家が1つの基本単位になっているが、近代ヨーロッパで1つの民族が1つの国家を作るという国民国家(民族国家)の考え方が発達した(→単一民族国家・多民族国家)。
ただし、現実にはすべての国民が1つの民族に属するという単一民族国家はほとんど存在しない。
参考:『新編 詳解地理B 改訂版』 二宮書店、2019年、174頁。
民族の具体例
ヨーロッパ人種
ヨーロッパ人種は、ラテン民族・ゲルマン民族・スラブ民族に分類される。
『最新 地理小辞典』 二宮書店、1983年、377頁。
民族の概念の目的・役割
歴史の対象
歴史を叙述するときは個人と個人の関係だけでは歴史にならない。
したがって、歴史が取り扱うの(歴史の「主語」「主体」)は人間の集団であるが、これには、氏族、部族、民族、国民(国家)などがある。
ただし、これらの人間の集団にはどれも不変の実体はなく、いずれも観念の上のものにすぎない。成員の個人は絶えず入れ替わっており、たとえば、自分を日本人であると思う、中国人であると思う、というようなアイデンティティは、世代ごとに中身が変化していき、名前も変わっていく。
したがって、どの時代のアイデンティティか、どういう状況下でのアイデンティティか、ということを常に注意しなくてはいけない。
参考:岡田 英弘 『歴史とはなにか』 文藝春秋、2001年、216-217項。
民族の概念の理論的根拠
民俗学
民族の概念は19世紀ヨーロッパの民俗学が作り上げたもので、基準や枠組みはきわめて不明瞭である。
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