西アジア―シリア(シリア・アラブ共和国)
シリアの基礎データ
シリアの位置・場所
シリアは北はトルコ、東はイラク、南はヨルダン、西はレバノン、イスラエルと国境を接し、一部は地中海に臨む。
参考:『コンサイス外国地名事典<第3版>』 三省堂、1998年、454頁
オスマン帝国が支配していた非トルコ人地域が第1次世界大戦後にイギリスとフランスによって行政区画が敷かれ、このうち(狭義の)シリアの領域がフランスの委任統治領となり、これが現在のシリア国家の国境線のもととなっている。
参考:『世界「民族」全史-衝突と融合の人類5000年史』日本実業出版社、2023年、204-205頁など
したがって、現代のシリア国境の大部分は人為的に引かれたものである。
「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/529790.php
なお、シリアは広義(歴史的な意味)では現在のシリア、レバノン、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンにまたがる地域を指した。
シリアの正式国名
シリア・アラブ共和国
正式名称はシリア・アラブ共和国である。
シリアの自然
地形
シリアの地理には国内にも国境沿いにも外敵を阻止し、国内で最終防衛線となる大きな自然の壁がない。
そのため、北西部は地中海に面しており、世界との貿易に開けていると同時に軍事侵攻のルートにもなりやすい。
「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/529790.php
平地
シリア砂漠
シリアの大部分はシリア砂漠に属する。
『コンサイス外国地名事典<第3版>』 三省堂、1998年、454頁
河川
ユーフラテス川
シリア東部にはユーフラテス川が流れる。
シリアの面積・人口
面積
シリアの面積は18.5万平方キロメートルで、日本の約半分である。
シリア基礎データ|外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/syria/data.html#section1
人口
- 1995年…1419万人(推定)
- 2022年…2156万人(推定)
シリアの主要都市
概要
首都ダマスカスは国内各地へのアクセスが限られている。
また、商都アレッポは歴史的にローマ帝国やトルコの影響下にあった。
そして、首都と商都をつなぐ回廊は戦闘の舞台になりがちであった。
「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/529790.php
首都
ダマスカス
ダマスカスがシリアの政治の中心である。
その他主要都市
アレッポ
北部の商都アレッポは小アジアとメソポタミアを結ぶ交易の要衝である。
いつの時代も、小アジアを支配する者(東ローマ帝国、オスマン帝国、そして現在のトルコ)は、多くの人でにぎわうアレッポを物欲しげに見てきた。
「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/529790.php
シリアの社会
民族・言語・社会
民族
アラブ人・アルメニア人・クルド人など
シリアの民族はアラブ人約75%、クルド人約10%、アルメニア人等その他約15%(2022年)。
シリア基礎データ|外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/syria/data.html#section1
言語
公用語
アラビア語
宗教
イスラム教・キリスト教
イスラム教スンナ派
主宗教はイスラム教(87%※)で、スンナ派が多数。キリスト教は10%※。
※シリア基礎データ|外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/syria/data.html#section1
シリアの政治
概要
先述したように現在のシリア国境の大部分は人為的に引かれものであり、かつ、地理的にも大きな自然の「壁」がないため、国境は脆弱である。
また、シリアは民族・言語・宗教が多様なため、中央に独立した統一政権を樹立することは著しく困難であり、国家としてのアイデンティティーが乏しい。
「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/529790.php
シリアの歴史
他国の支配下
概要
シリアは古代から目まぐるしく他国の支配下に入った。
『コンサイス外国地名事典<第3版>』 三省堂、1998年、454頁
たびたび大帝国(アッシリア、アケメネス朝ペルシャ、アラブ人、オスマン帝国など)の完全な支配下に置かれた。
また、2つの大国(ローマ帝国とパルティア、ビザンチン帝国とササン朝ペルシャ、イルハン朝とマムルーク朝)が覇権を争う地域だった時期もある。
「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/12/529790.php
オスマントルコ領
シリアは長くオスマントルコ領であった。
フランスの委任統治領
第1次世界大戦後の1920年にレバノンとともにフランスの委任統治領となった。
第2次世界大戦後
フランスの植民地から独立
第2次世界大戦後の1946年にフランスの植民地から独立した。
中東戦争
1948年の第1次中東戦争で敗北したことは、独立まもないシリアを不安定にさせ、汎アラブ主義の広がりを許した。
そして、エジプトのガマル・アブデル・ナセル大統領の呼びかけに応じ、エジプトと共にアラブ連合共和国(UAR)を樹立、のちに北イエメンも合流した。
やがてUARが崩壊し、67年の第3次中東戦争で壊滅的な敗北を喫してからも、シリアで汎アラブ主義が弱まることはなかった。
アサド政権
70年にハフェズ・アサドがクーデターで全権を掌握し、バース党の支配が始まると、政治的安定が生まれた。しかし、それは強権政治によって実現したにすぎなかった。
アラブの春
アラブ諸国の民主化の波「アラブの春」はアサド政権を揺るがした。
2011年に始まったシリア内戦は、外国から来たイスラム原理主義勢力と政府軍の残虐行為により悪化の一途をたどり、大量の避難民とインフラ崩壊をもたらした。
シリアの国際関係
地政学
ロシア
戦略的な要衝
シリアはロシアにとって死活的に重要な戦略的な要衝である。
シリアの南東側にはイラク、クウェート、サウジアラビア、カタールなどの石油・天然ガスの重要な産出国がある。そしてシリアより北西側にはトルコがあり、さらにその西側にはヨーロッパ諸国が広がっている。
仮に南東側の石油・天然ガスの重要な産出国と北西側のヨーロッパ諸国を結ぶパイプラインが建設されると、中東の石油・天然ガスが極めて安価にヨーロッパに供給されることになり、そうなると自国の石油・天然ガスを売りたいロシアとしてはたいへん困ることになる。
したがって、シリアを反欧米にしておいて、南東側と北西側がパイプラインで繋がらないようにすることが、ロシアにとって戦略的に極めて重要であった。
シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる「究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」(朝香 豊) | 現代ビジネス | 講談社(2/6) https://gendai.media/articles/-/142543?page=2
トルコ
南東側の石油・天然ガスの重要な産出国と北西側のヨーロッパ諸国がパイプラインで繫がれば、トルコはパイプラインの重要な要の立場に立てることになる。
シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる「究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」(朝香 豊) | 現代ビジネス | 講談社(2/6) https://gendai.media/articles/-/142543?page=2
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